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ポップコーンをほおばって-ANOTHER SIDE OF KAI BAND|田家秀樹

ポップコーンをほおばって 1974年の甲斐バンドデビューを1972年の甲斐よしひろから語り始める、甲斐バンドストーリー。
初版はA5版単行本で講談社から発行され、後に文庫本化された際に甲斐バンド解散まで加筆され集英社より発行されている。

文庫本版






[文庫本版]



単行本版:
講談社1985/7/1[ISBN4-06-102405-1(0)(ヤ)]

文庫本版:
集英社1987/5/25[ISBN4-04-168701-2 C193]


サブタイトルにもあるように"Another Side"な視点から甲斐バンド、甲斐よしひろを描写した甲斐ストーリーである。
甲斐バンドのスタート地点(デビュー)である1974年でなく、あえて甲斐よしひろが大手旅行代理店に就職し4ヶ月に退職・・・照和に戻ってきて歌うというところから始まる。
合間に甲斐に携わってきたマネージャー、スタッフ、コンサート関係者の話を巧みに挟みながら、その時代の甲斐バンドを表している。
九州最後のスーパー・スターとして鳴り物入りでデビュー、そして屈辱のステージ。
TVに出ながらしてこの場をバンドの場ではないと振り切ってツアーに精力的な活動を見せるなど、あのTVでの「事件」に至るまで甲斐の心理的な部分が初めて明かされたのではないか・・・。
時代毎の出来事の裏事情がしっかりと描写されているので、表部分しか見ていない我々ファンの目からは想像もつかない、生み出す側の葛藤を読むことが出来る。

この本で印象に残っていた部分で1982年に発売された写真集のくだりがある。
甲斐の希望と絶望があの写真集にあるという・・・この部分でだけでこの写真集を買わなかった事を後悔したのだった。
その後、ようやく手にすることが出来たのだけれど、まず最初にこのページを探したのは言うまでも無い。

HEROが作られる過程、学園危機一髪での"漂泊者"誕生までの話。
そしてザ・ベストテンでの話。
花園での暴動寸前の状況下でのスタッフ、甲斐の葛藤・・・BIG GIGや国技館への準備、裏事情・・・どれも興味深い話ばかりだ。
BIG GIGに関して言えば国内に残ったスタッフが奔走してコンサートが終わるまでの話があるが、後に甲斐自身が「か・さ・ぶ・た」で語ることになる、甲斐の内面に芽生えたモノがその時にあったとは、誰もが気が付かないでいたのかもしれない。
そして単行本版はラヴ・マイナス・ゼロの発売、国技館のライヴ構築の話まで進む、結びは甲斐がソロ契約を東芝EMIととりおこなったという出来事を語り、舞台は次に移ろうとしている・・と括られた。

2年後、甲斐バンドの解散後1986年の出来事が追加されて文庫本が出た。
解散発表、PARTYのこと、黒澤フィルムスタジオは映画"HERE WE COME 4 SOUNDS"の撮影の条件にも適った場所であったこと、武道館で追えず最後のスペシャルを・・という声がスタッフからあがったこと・・・いっぱいの出来事が1986年にはあった。
その後、甲斐がソロで活動を開始し武道館3日間公演を終える所で終わる。
文庫本の結びはこうだ・・・「あらためてこう書かなくてはいけないのだろう。今、舞台は、移り変わった、と」。

巻末にあるLIFE TIME(年表)とディスコグラフィーが詳しい。
当然文庫本の加筆で1985〜86年の活動、ディスコグラフィーが追加されている。
また、村上龍による解説が甲斐に対しての手紙という形で追加されている。
手に入るならば、文庫本を探して読んで下さい。甲斐バンドの裏の歴史が判ります。


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